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家族信託の終わり方 親が亡くなったら財産は誰に?契約書で決まる行き先【2026】

著者:家族信託相談ナビ 編集部
家族信託信託の終了残余財産帰属権利者相続税

「家族信託で親の財産を管理できるのは分かった。でも、親が亡くなったら、その財産は結局どうなるの?」

家族信託の相談では、始め方の話が中心になりがちです。けれど本当に大切なのは、「いつ終わり、残った財産が誰に渡るのか」という出口の設計です。ここを決めずに契約すると、親が亡くなったあとに兄弟で遺産分割をやり直すことになり、家族信託の意味が半分失われてしまいます。

この記事では、家族信託が終わるタイミング、残った財産の行き先のルール、終了後の手続きと税金、そして契約前に決めておくべき「終わり方」を解説します。

結論|終わるタイミングも、財産の行き先も契約書で決まる

家族信託の終わり方は、次の2つでほぼ決まります。

決めること 契約書での呼び方 定めがないと
いつ終わるか 信託の終了事由(例:受益者である親が亡くなったとき) 法律の定める事由が起きるまで続く
残った財産を誰に渡すか 帰属権利者・残余財産受益者 委託者(親)の相続人に渡る=遺産分割が必要になる

(出典:e-Gov法令検索「信託法」第163条・第182条)

つまり、家族信託は「始めるときに、終わり方まで決めておく契約」です。契約書にきちんと書いておけば、親が亡くなったあと、遺産分割の話し合いをしなくても、決めておいた人に財産を渡せます。

山田くん山田くん

家族信託って、親が亡くなったら自動的に終わるものじゃないんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

自動的には終わりません。「受益者である親が亡くなったときに終了する」と契約書に書いてあるから終わるのです。多くの家族信託がそう定めているため自動的に見えるだけです。親の死後も配偶者のために続ける、といった設計もできます。

家族信託が終わる主なタイミング

信託法では、家族信託が終わる場面として次のようなものが定められています。

終わるタイミング よくある例
契約書で定めた事由が起きたとき 受益者である親が亡くなったとき
委託者と受益者が合意したとき 親が元気なうちに「もう必要ない」と決めたとき
信託の目的を達成した・達成できなくなったとき 信託した不動産をすべて売却し、目的がなくなったとき
受託者が受益権の全部を1年間持ち続けたとき 受託者の子が、受益者の地位も1人で持つ状態が1年続いたとき
受託者がいない状態が1年間続いたとき 受託者が亡くなり、次の受託者が決まらないとき

(出典:e-Gov法令検索「信託法」第163条・第164条)

実務で一番多いのは、1つめの「受益者である親が亡くなったとき」です。ただし、親が存命中に不動産を売ったあと信託を終わらせたい、といった場合は、そのための条項を契約書に入れておく必要があります。

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「私一人っ子、親一人子一人ですが、親名義の不動産の売却を考えております。」

ベストアンサー:「基本的に、親御さんが亡くなるまで信託契約に縛られるので、もし、不動産を売却した後には、信託契約を終了させるというのであれば、それなりの契約条項を作成しておく必要があります。」
(出典:Yahoo!知恵袋、2024年6月17日投稿/質問ページ)

回答のとおり、家族信託は一度始めると長く続く契約です。「売ったら終わり」「施設に入ったら終わり」など、家族が想定している区切りがあるなら、契約書の終了事由に具体的に書いておきましょう。

山田くん山田くん

親が元気なうちなら、いつでもやめられるんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

はい。委託者と受益者は、いつでも合意で信託を終わらせることができます。親が委託者と受益者を兼ねている一般的な家族信託なら、親の判断でやめられます。ただし、契約書に別の定めがあればそれに従いますし、親が認知症になったあとは合意自体ができなくなります。

残った財産は誰のものになる?3段階のルール

信託が終わったときに残っている財産を残余財産と言います。残余財産の行き先は、次の順番で決まります。

順番 残余財産を受け取る人 ポイント
1 契約書で指定した人(残余財産受益者・帰属権利者) 「長男に」「妻に」など、自由に決められる
2 指定がない、または指定された人が全員放棄した場合は、委託者(親)またはその相続人 相続人が複数いれば、遺産分割の話し合いが必要になる
3 それでも決まらない場合は、清算受託者 終了時に財産を管理していた受託者

(出典:e-Gov法令検索「信託法」第182条)

注目してほしいのは2段目です。契約書で行き先を決めていないと、残余財産は親の相続人に渡ることになり、結局は兄弟で遺産分割をしなければなりません。家族信託で親の財産をスムーズに管理できても、最後の分け方で揉めてしまっては意味がありません。

山田くん山田くん

帰属権利者は、受託者の自分にしてもいいんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

してもかまいません。受託者が帰属権利者を兼ねるケースはよくあります。ただし、ほかの兄弟から見ると「管理していた人が全部もらう」形になるため、不公平だと感じられやすくなります。兄弟の遺留分にも配慮しながら、契約前に家族で話し合っておくことが大切です。

終わったあとにやること

信託が終わっても、すぐに財産が帰属権利者のものになるわけではありません。終了時の受託者が清算受託者となり、次の仕事をします。

  • 1. 進行中の事務を終わらせる:賃貸借契約や管理の仕事に区切りをつける
  • 2. 債権を回収し、借入金などの債務を支払う
  • 3. 残った財産を帰属権利者に引き渡す

(出典:e-Gov法令検索「信託法」第175条・第177条)

財産の種類ごとに必要な手続きは、次のとおりです。

財産 手続き 窓口
不動産 信託登記の抹消と、帰属権利者への所有権移転の登記 不動産がある地域を担当する法務局
信託口口座の預金 口座の解約、または帰属権利者への払い出し 信託口口座を開いた金融機関
その他の財産 帰属権利者への引き渡し ―

福島県内の不動産であれば、福島地方法務局(本局)や、郡山・いわき・若松・白河・相馬の各支局、二本松・田島・富岡の各出張所のうち、その不動産を担当する窓口で登記をします。
(出典:福島地方法務局「不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧」)

信託口口座の扱いは、口座を開いた金融機関によって手続きが異なります。口座を作るときの注意点は「家族信託の信託口口座とは?」で解説しています。

山田くん山田くん

親が亡くなったら、受託者の仕事はすぐ終わりだと思っていました…。

司法書士の先生司法書士の先生

実際には、終了後の清算が受託者の最後の大きな仕事になります。借入金の返済や登記、口座の手続きまで終えて、ようやく受託者の役目が終わります。帳簿や通帳の記録をきちんと残しておくと、この清算がずっと楽になります。

税金は「相続」と同じ扱いになる

親が委託者兼受益者で、親の死亡によって信託が終わった場合、帰属権利者が受け取る残余財産は、親から遺贈により取得したものとみなされ、相続税の対象になります。
(出典:国税庁 質疑応答事例「信託が終了し帰属権利者が残余財産を相続又は遺贈により取得したものとみなされた場合の取得費」)

項目 扱い
残余財産を受け取ったとき 相続税の対象(遺贈で取得したものとみなされる)
所得税 残余財産の取得そのものには課税されない
受け取った不動産を将来売るとき 取得の時期と取得費は、親から相続したものとして引き継ぐ

(出典:国税庁 質疑応答事例「信託が終了し帰属権利者が残余財産を相続又は遺贈により取得したものとみなされた場合の取得費」)

家族信託をしていても、相続税が安くなるわけではありません。親の財産として相続税の計算に含まれ、基礎控除を超えれば申告が必要です。家族信託の税金の全体像は「家族信託の税金は3つのタイミングで考える」をご覧ください。

山田くん山田くん

信託した財産は受託者の名義になっているのに、相続税は親の財産として計算するんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

そうです。名義は受託者でも、利益を受けていたのは受益者の親だからです。税金の世界では、受益者が財産を持っているものとして扱います。そのため、親が亡くなったときは、信託した財産も含めて相続税を計算します。

「終わり方」を契約前に設計しておく

家族信託の出口は、家族の事情によって最適な形が変わります。

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「家族信託の終了は通常、委託者兼受益者(つまり両親のうちのどちらか)の死亡により終了すると思います。 このとき、信託契約は終了し、相続が発生します。 しかし私はその不動産を一部でも持ちたくない。(中略) この場合、家族信託契約が終了すると「私の手から完全に離れる」ということでいいのでしょうか?」

ベストアンサー:「当初の受益者が亡くなったらその配偶者を次の受益者に最初から指定しておく受益者連続型の信託にしておけばよいのでは?」「現金にしてから信託を終了できれば、もしどこかに寄付をするとしてもスムーズだと思います。」
(出典:Yahoo!知恵袋、2024年12月20日投稿/質問ページ)

この回答には、出口設計の大切な考え方が2つ入っています。1つは、親の一方が亡くなっても信託を終わらせず、もう一方の親を次の受益者にする受益者連続型の設計です。もう1つは、不動産のまま終わらせるのではなく、売却して現金にしてから終了する設計です。

出口の設計 向いている家族
親の死亡で終了し、帰属権利者を指定する 財産を受け取る人がはっきり決まっている
父の死後は母を受益者にして続け、母の死亡で終了する 両親ともに長生きしそうで、二次相続まで任せたい
不動産を売却して現金化してから終了する 実家を誰も使わない、相続人が不動産を持ちたくない

受益者連続型の仕組みは「家族信託と遺言の違いは?」で詳しく解説しています。

山田くん山田くん

帰属権利者に指定された人が「いらない」と言ったら、どうなるんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

帰属権利者は、原則として受け取る権利を放棄できます。放棄すると、最初から帰属権利者ではなかったことになります。ただし、契約の当事者になっている人は放棄できません。指定された人が全員放棄すると、親の相続人に渡ることになるため、本人の意向も確認してから指定しましょう。

司法書士に相談すべきケース

終わり方の設計は、家族信託の中でも特に専門的な部分です。次のケースに当てはまる場合は、家族信託に詳しい司法書士などに相談することをおすすめします。

相談すべきケース 理由
両親の共有名義の不動産を信託したい 父と母の信託の終わり方を、それぞれ設計する必要がある
兄弟の一人を帰属権利者にしたい 遺留分や兄弟間の公平をふまえた設計が必要
親の存命中に不動産を売る可能性がある 売却後に終了させる条項が必要
相続人の中に、相続放棄を考えている人がいる 帰属権利者の指定と相続放棄の関係を整理する必要がある
すでに信託が終わり、登記や口座の手続きが必要 清算と登記の手続きを確実に進める必要がある

福島県内で家族信託を相談・手続きできる窓口は「家族信託の手続きは何から?」で紹介しています。

山田くん山田くん

契約書のひな形を使えば、終わり方の条項も自分で書けそうな気がしますが…。

司法書士の先生司法書士の先生

ひな形の条項をそのまま使うと、家族の事情に合わない出口になりがちです。誰が帰属権利者になるか、二次相続まで続けるか、売却後どうするかは、家族ごとに答えが違います。終わり方こそ、専門家と一緒に設計すべき部分です。

よくある質問

受託者が親より先に亡くなったら、家族信託はどうなりますか?

契約書で後継の受託者を決めていれば、その人が受託者を引き継ぎます。新しい受託者が就任しない状態が1年間続くと、信託は終了します。
(出典:e-Gov法令検索「信託法」第163条)
後継受託者の決め方は「家族信託の受託者は誰にする?」で解説しています。

親が亡くなったあとに、家族の合意で終わらせることはできますか?

委託者が亡くなっている場合、委託者と受益者の合意による終了の規定は適用されません。
(出典:e-Gov法令検索「信託法」第164条)
親の死後に信託をどう終わらせるかは、契約書の定めに従うことになります。

帰属権利者は、受け取りを断ることができますか?

契約の当事者でなければ、受託者に対して権利を放棄する意思表示ができます。放棄すると、最初から帰属権利者としての権利を取得していなかったものとみなされます。
(出典:e-Gov法令検索「信託法」第183条)


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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